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最高裁判所第二小法廷 昭和42年(オ)901号 判決 1968年3月08日

上告人

東出寛

右訴訟代理人

高垣憲臣

被上告人

新井申造

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人高垣憲臣の上告理由一について。

原判決を通読すれば、訴外大野重信は、登記権利者である被上告人から本件所有権移転登記申請行為について代理権を付与せられていたが他方登記義務者である上告人からも本件所有権移転登記申請行為について代理権を付与せられ、双方の代理人として本件所有権移転登記手続をしたものである趣旨の判示がなされているものと認めることができるし、上告人が大野重信に右の代理権を付与したとの事実は、原判決の挙示する証拠関係から、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、この違法を前提とする所論違憲の主張も理由がない。

論旨は、原判決を正解せず、また独自の見解に立つて、適法な原審の事実の認定それに基づく正当な判断を非難するに帰し採ることができない。

同二について。

登記申請行為は、国家機関たる登記所に対し一定内容の登記を要求する公法上の行為であつて、民法にいわゆる法律行為ではなく、また、すでに効力を発生した権利変動につき法定の公示を申請する行為であり、登記義務者にとつては義務の履行にすぎず、登記申請が代理人によつてなされる場合にも代理人によつて新たな利害関係が創造されるものではないのであるから、登記申請について、同一人が登記権利者、登記義務者双方の代理人となつても、民法一〇八条本文並びにその法意に違反するものではなく、双方代理のゆえをもつて無効となるものではないと解すべきであるし、また、登記申請当事者の一方から事件の依頼をうけ登記申請行為について代理権を付与せられた弁護士が、登記申請当事者の他方からも登記申請行為について代理権を付与せられて、登記申請につき前記のように双方代理をした場合でも、弁護士の当該行為は、特段の事由のないかぎり、依頼者の信頼を裏切り、その利益を害するものでもなく、弁護士の信用品位を涜すものともいえないから、弁護士法二五条一号に違反しないと解すべきである。そして、原審の適法に確定した事実関係のもとでは、右の特段の事由が存するものとは認められない。

結局、これと同趣旨に出た原判決の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は採ることができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 草鹿浅之介 城戸芳彦 色川幸太郎)

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